プレシャス~社長と偽りの蜜月~
***

「伊集院院長の承諾が取れました。納期に間に合わせるよう努力致します。社長」
東亜医科大付属病院の伊集院千歳(イジュウインチトセ)院長は朱音の主治医。脳神経外科の権威。
朱音の記憶が早く戻るように色々と手を尽くしてくれた。

「ご苦労だった。結城部長」

人体が異物と認識されにくい金属・・・チタン。

人口骨やインプラント、医療機器具に多く使用されていた。

しかし、手術や外来処置に使用されている多くの医療器具は銅製。銅製の手術器具は重量があるのが難点で、銅製に代る軽量のチタン製の手術器具を自社で開発。

金属にアレルギー反応を起こす患者にも使用可能で、医療現場での評判も上々。
今回は伊集院院長が希望するチタン製のオーダーメイドの手術器具で、ようやく院長のお眼鏡に適う物が完成し、承諾が取れた。結城部長の手腕には感謝する。
ウチの大口だから・・・
でも、朱音のコトは許せない。

「これで失礼します。社長」

早々に踵を返そうとする結城部長を引き止める。

「結城部長、少し二人で話がしたい」

俺は豊永さんに席を外すよう命令した。

社長室で二人、応接ソファを囲んだ。


「朱音に余計なコトを言っただろ?」

「・・・何れはバレるコトだっただろ?」

結城部長のコトは幼い時から知っている。結城誠二副社長のご子息だから。




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