プレシャス~社長と偽りの蜜月~
部屋に入るなり、雅人は嘆息して、ソファに腰を下ろす。

「どうしたの?雅人」

「別に・・・最近、離婚は口にしないけど、離婚する気はなくなったのか?」

「無いワケじゃないわ・・・お母様の体調が少し優れなかったようだし、私達が離婚するなんて知れば余計な心労かけるでしょ?」

「そう言うコトか・・・」

雅人は納得してスマホを弄り始める。

同じ空間に居ながらも別々のコトをして時間を過ごす。甘い睦言もスキンシップもない。今は唯の同居人だ。

「雅人は私のコト愛してるのよね・・・」

「いつでも朱音をコトを想っているよ」

「じゃいつも私のコト抱きたいと思ってるの?」

「…あんな風に無理矢理抱いて・・・罪悪感があるし。今は求めないように自制している。だから、そんなコト訊くなよ」

箍の外れた雅人が今度はストイックになっていた。

「朱音が俺を欲しいのか?」

雅人はスマホからテーブルに置き、私を興味深々に見た。

「じ、冗談言わないでよ」

「だよな・・・朱音は俺のコト嫌いだもんな・・・」

< 49 / 87 >

この作品をシェア

pagetop