水晶の探偵
口元が緩み、愛しげに目を細める。
それだけ、知也を思っているのだ。
「……でも、あぁやって自分の興味があることに向かうときは、厳しい雰囲気もすっかり消えるの。
それどころか、柔らかくて、無邪気で、暖かい。
そんな人なの、彼は」
「そうですか……」
“彼”に目を向ける。
子供のようにはしゃいで、晶を質問攻めにしている。
その口からは、次々と言葉が紡ぎだされる。
あれは?
それで?
それから?
キラキラと目を輝かせる姿は、とても厳粛な政治家とは思えないものだった。
本当に子供のよう……
響は小さく笑みを浮かべる。
いろんな人がいるもんだな。
無表情から笑みを浮かべた響を不思議そうに香恵が見た。
その時、
「何をしている、香恵」
低く響いた声に、響と晶も振り返る。
肌にぴったりと馴染んだ黒いスーツ。
胸には光るバッチ。
白髪交じりの男性の目元にどこか香恵と同じ印象を受ける。
「お父様……」
小さく呟く。
ほぼ同時に知也が頭を下げた。