水晶の探偵
テーブルの上にも目を向ける。
床と同様に普通だ。
グラスが倒れて、テーブルクロスが若干ずれているが、不自然な穴や紐なんかはない。
最も、それらが使われたとは考えがたい。
会場のどこにも捨てられていなければ、客の持ち物検査からも不自然な物は発見されなかった。
身近なものを使ったとも考えられないわけではない。
しかし、自分たちがこのテーブルに来たときには何ら異変は無かったうえ、その後テーブルを離れることもなかった。
つまり、毒を入れたとするなら、アイスティーに直接入れたか、中に入れるであろうシロップやミルクに仕込むかだ。
香恵は何も入れずに、そのまま本当にストレートティーで飲んでいたため、シロップやミルクに入れたというのは、あり得ないと断定できる。
アイスティーに直接入れた説が有力だが、いつ、どうやって、誰を狙って入れたのか。
謎は深まる一方だ。
「そういえば…」
不意に三田村が声を出した。
「彼女…晶くんはどうしたんだい?」
その問いに、思わず苦笑いしてしまう。
「多分…あのバカと言われた方を説教してると思います」