水晶の探偵
晶と一緒に行動するようになって、半年程の月日が経っている。
だからといって、お互いのことを何もかも知っている、とは言えない。
響も晶に知られていないことがあるし、晶だって響に知られていないことがあるだろう。
特に、晶が響に出会う前のことは…。
響が知らない刑事とも、たまに晶は知り合いだったりする。
そのたびに「昔色々とね」と言って流される。
色々とは何なのか?
はっきり言って気になるが、深く聞く気にもならない。
そのうち話してくれるだろうとも思うのも事実だ。
何よりも、そういう時の晶は、いつも見せないような厳しく、悲しげな表情をしているのだ。
響の知らない何かを晶は抱えている―――。
はっきりとした根拠のない推測なのに、その推測を捨てることができなかった。
赤紫に近い色をしたカーペットの上に白いテープが張ってある。
その周りには、A、B、C等のアルファベットが書かれた札。
所々にある丸い印は、香恵が倒したグラスやこぼれた飲み物類の合った印だ。
何ら変わりのない普通の空間。
ここに、どんな真実があるのだろうか……。