恋の人、愛の人。

明日、明後日くらいに使う物以外は荷物を纏めておこう。…ベッドの下にブラとか落ちてないかしら。念の為、覗いて見た。
…無い。よし。
はぁ…居なくなった後で恥ずかしい目に会いたくないものね…。


「コンコン、居るか〜」

「はい」

珍しい、口でコンコンて言うなんて。

「はい、どうぞ」

ドアを開けた。

…はい?居るかって声をかけておいて用ではないの?

「あ、わぁ、どうしたんです、これ」

「…そっちこそ…また、いいのか?」

ん?え?…あ゙っ。良くない!

「ちょっと待ってください」

慌てて閉めた。

「学習しろよな、…全く」

…ペロンてめくれて落ちたらどうすんだよ。
カチャ。

「はい、いいですよ。またうっかりしちゃって、はい、もう大丈夫、いいですよ」

何かしら慌てて引っ張り出して着たのは解っているが…、バスタオルやら、脱いだ洋服やらが…ベッドに散乱しているじゃないか。
…見ないでおいてやるか。

「気をつけろよな。じゃあ…ほい。こっちはショートケーキらしいぞ。それからこっちは普通の菓子らしい。貰い物だ、やる」

両手にそれぞれ可愛らしい色柄の袋を持っていた。

「あ、こんなに…。陽佑さんてモテるんですね?」

「今頃解ったのか?引く手あまたよ。そんなモテモテの俺が、梨薫ちゃんにこんな手厚い事してるって、どうよ」

「どうよって。有り難く、色んな事にとても感謝しています」

あちゃ…。あっさりとその程度の感想かよ…。もっとこうないもんかね…。まあ、こっちも聞き方は軽いしな。

「こっちのが駄目になると勿体ないから、あれこれ食べたい気持ちは我慢して、こっちから食べるんだぞ?」

「ゔ…解ってます。でもいいんですか?私が全部頂いても」

「いいんだ。美味しく頂いたって言っとくから。大体…」

「え?」

「俺にこういう類いの物をくれてもだな…。まあ、頂き物だから文句は言わないが…」

「あまり好きじゃない物がどんなタイプの物かまで、渡す人は解らないでしょ?そうですね…まあ、私が美味しく頂きますから。あ、味とか少しは知っといた方がいいんじゃないですか?聞かれたら困るでしょ?」

ちょっと待ってくださいね〜と呟きながら、もう一つの、普通のお菓子だという袋を置き、バチバチとショートケーキの入っているという袋を開けて開き、指先でクリームを少し掬った。

「あ、これフロマージュだから陽佑さんきっと好きですよ?……はい」

口に近づけた。

「何だか、チーズだけじゃないみたい…手の込んだクリームっぽいですよ?だから余計食べてほしかったんじゃないですかね?」

目の前に差し出した手を掴み、クリームの付いた指先をくわえた。

「…あ」

…。
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