恋の人、愛の人。
「陽佑さん…」
「お、いらっしゃい。何だ、連日の来店。とうとう俺に堕ちたか?」
…。
「あ、これ、どうぞ…」
部屋に一度帰ってから来た。紙袋を差し出した。
「ん?」
「昨夜、変な話というか、昔話を聞いて貰ったお詫びです」
渡したのは、お取り寄せしたスイーツだった。丁度今日届いた物だ。
「…ほお。まあ、頂いておくよ。あ、これ…結構お高いやつだろ。な?」
箱の合わせを広げて覗いている。
「はい…勢いで買ったようなもんです。届くまでちょっと待ちました。やっと届いた栗の沢山入った…テリーヌ」
「それ。テリーヌ、それだ。だから半分なのか」
「…はい。そこは、私も食べたくて注文した物ですから。やはり食べたいので。
迷わず半分に切り分けて箱を入れ替えて持って来ました」
「フ、ハハハ、おすそ分けって事だ…サンキュ。ハハハ。梨薫ちゃんらしいな、全く」
「はい…食べたかったので、失礼を承知で、すみません」
「いいよ。俺だって丸々貰っても持て余すから、こうして開けて、きっと梨薫ちゃんに食べるかって聞いてたよ。結局同じ事になってたさ。
で、今日はどうしたんだ?あ、何か適当に…飲むか?」
こっくり力無く頷いた。
スツールに腰掛けた。
「陽佑さん…男の人は、女難とか言葉があるじゃないですか。女は女で“男難”てあるんですかね」
「はぁあ?何だよ…おい、何かあったのか」
「…もう、散々です。朝から、右の頬…クリーンヒットされました」
ほら、見てくださいと左の頬を向けた。見せたところで何も無いけど、気持ちです…はぁ。
「クリーンヒット?ん?俺から見て右って事か…男難て、おい…叩かれたのか?男に。…最低だな、そいつ…」
「あ、違うんです。…女性にです」
「ん?男に女が居たのか?…修羅場か…梨薫ちゃんが直接関わってるのか。それとも巻き添えなのか?」
「修羅場も修羅場…いきなりの誤解です。事は誤解から始まり…何にも関係ないのに、有無を言わさず、思い切り振り抜かれてしまいました」
「は?じゃあ、つまり間違いでって事か…」
「…はい。完全な誤解です」
「は、あ、そりゃあ酷いな。だけどよく解らんが、誤解させるような男が悪いって事になるのか。
大丈夫か?…もうちょいちゃんと見せて……どういう事だよ…ん?」
カウンターの前から腕を伸ばし顎に両手を当て、首を振らせて左右を見比べられた。
「…んー、腫れては無いか…熱ももってないようだし…」
両方の頬にも交互に触れた。
「朝一の事だったんで、もう何でもないです。じんじん熱くて痛かったのは午前中くらいで、後はマシになりました。もう大丈夫は大丈夫なんです」
ハンカチ濡らして、ずっと当てて仕事したんだから…。
部長室から戻ったらハンカチを当てている、そんな様子に疑問と心配の目を向けてくる後輩に、部長の奥さんに引っぱ叩かれたなんて、説明もせず簡単には言えないから、急に奥歯が痛みだしたとか言って誤魔化したんだけどね。
「お、いらっしゃい。何だ、連日の来店。とうとう俺に堕ちたか?」
…。
「あ、これ、どうぞ…」
部屋に一度帰ってから来た。紙袋を差し出した。
「ん?」
「昨夜、変な話というか、昔話を聞いて貰ったお詫びです」
渡したのは、お取り寄せしたスイーツだった。丁度今日届いた物だ。
「…ほお。まあ、頂いておくよ。あ、これ…結構お高いやつだろ。な?」
箱の合わせを広げて覗いている。
「はい…勢いで買ったようなもんです。届くまでちょっと待ちました。やっと届いた栗の沢山入った…テリーヌ」
「それ。テリーヌ、それだ。だから半分なのか」
「…はい。そこは、私も食べたくて注文した物ですから。やはり食べたいので。
迷わず半分に切り分けて箱を入れ替えて持って来ました」
「フ、ハハハ、おすそ分けって事だ…サンキュ。ハハハ。梨薫ちゃんらしいな、全く」
「はい…食べたかったので、失礼を承知で、すみません」
「いいよ。俺だって丸々貰っても持て余すから、こうして開けて、きっと梨薫ちゃんに食べるかって聞いてたよ。結局同じ事になってたさ。
で、今日はどうしたんだ?あ、何か適当に…飲むか?」
こっくり力無く頷いた。
スツールに腰掛けた。
「陽佑さん…男の人は、女難とか言葉があるじゃないですか。女は女で“男難”てあるんですかね」
「はぁあ?何だよ…おい、何かあったのか」
「…もう、散々です。朝から、右の頬…クリーンヒットされました」
ほら、見てくださいと左の頬を向けた。見せたところで何も無いけど、気持ちです…はぁ。
「クリーンヒット?ん?俺から見て右って事か…男難て、おい…叩かれたのか?男に。…最低だな、そいつ…」
「あ、違うんです。…女性にです」
「ん?男に女が居たのか?…修羅場か…梨薫ちゃんが直接関わってるのか。それとも巻き添えなのか?」
「修羅場も修羅場…いきなりの誤解です。事は誤解から始まり…何にも関係ないのに、有無を言わさず、思い切り振り抜かれてしまいました」
「は?じゃあ、つまり間違いでって事か…」
「…はい。完全な誤解です」
「は、あ、そりゃあ酷いな。だけどよく解らんが、誤解させるような男が悪いって事になるのか。
大丈夫か?…もうちょいちゃんと見せて……どういう事だよ…ん?」
カウンターの前から腕を伸ばし顎に両手を当て、首を振らせて左右を見比べられた。
「…んー、腫れては無いか…熱ももってないようだし…」
両方の頬にも交互に触れた。
「朝一の事だったんで、もう何でもないです。じんじん熱くて痛かったのは午前中くらいで、後はマシになりました。もう大丈夫は大丈夫なんです」
ハンカチ濡らして、ずっと当てて仕事したんだから…。
部長室から戻ったらハンカチを当てている、そんな様子に疑問と心配の目を向けてくる後輩に、部長の奥さんに引っぱ叩かれたなんて、説明もせず簡単には言えないから、急に奥歯が痛みだしたとか言って誤魔化したんだけどね。