恋の人、愛の人。
はぁ…終わった。思った通り、脳は覚醒してしまった。これではきっと眠れはしない。

…ずっとだ。一度も離す事なく、黒埼君は私の手を握っていた。今だってまだ握っている。

「…そろそろ、部屋に戻るね」

「え?部屋…」

「あ、戻るって、ベッドにって事よ」

「あぁ、はい」

「あっ。黒埼君」

「だ、大丈夫です。今…」

画面は映画の終了と供に突然黒くなった。…本日の放送は終わり。部屋は一気に闇になった。
これでは動く事も難しい。
真っ暗になったからといって特に慌てはしなかった。リモコンに手を伸ばした。どこかまだ放送しているチャンネルに換えれば明かりがとれる。
多分同じ事を考えていたのだと思う。
二人供リモコンがあったと思う辺りを探った。

「…あれ?…、黒埼君の方にある?」

「リモコンですよね。俺も今探してて…。真ん中にあったはずだけど…」

「確かそうよね。あ、…」

「わっ、すみません…うわ。すみません」

「あ、ごめんごめん」

触れるのはお互いの手だったり、薄い布団の上からでも解る足だったり…。これ以上は…妙な辺りに触れやしないかと少し探るのを止めた。

「失敗しましたね。せめて常夜灯くらい点けておけば良かった」

「そ、そうね。カーテンだって、ちょっとだけ隙間が出来てたら、なんとかなってるのよね、外の灯りだってあるから」

遮光カーテンは流石に遮光カーテンだ。

「いや…、映画に夢中になって…持っておけば良かった。あ…、あ゙、今、当たったような…あれ?…違うか」

黒埼君はパタパタ叩くようにしてみたり、撫でるようにして見るが、触れるのはやはり手ばかりで肝心のリモコンはいつまで経っても手に当たらなかった。…。

「探し始めに遠くに滑らせてしまったのかも知れませんね。梨薫さん、動かずにそのままで居てください。俺がちょっと、探ります」

「…うん」
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