恋の人、愛の人。


「安心してください。見えない事をいい事に押し倒そうとか思ってないですから。リモコンを探すより壁伝いに行けば電気のスイッチがありますから」

「あ、本当、そうだった」

俺は、ちょっと越えますよと声を掛けて、梨薫さんの足を確認して四つん這いで越えた。

周りを探りながら立ち上がって壁の方へ手を伸ばした。壁を確認して進んだ。あった、…ふぅ。

「いいですか?点けますよ?」

「うん」

パチ。

わ…眩しい。暗闇に慣れた目が明るさに眩む。

「はぁ、何だか」

「うん、何だか、災難だったね」

リモコンはソファーの上にあった。記憶は曖昧なものだ。途中、触りもしなかったし。

「疲れたね…眠れないし…珈琲でも飲む?あ、黒埼君は眠れる?」

「んん。頭が起きてますね」

「ね。あんなの観たら直ぐ眠るなんて無理だし、悪夢だって見そう」

「ですね…」


2時や3時に珈琲を飲むのもだけど…。

「何だかぐったりしちゃった…内容が濃い物は録画しておいて昼間に観れば良かったかも…」

「そうですね。でも…それだと一緒には観られない。…見応えがあって面白かった」

「あ、うん、そうね…」

入れた珈琲のカップを黒埼君に渡した。

「何だか不思議な事してるね…今更だけど」

同棲してるって訳でもないし、泊まる部屋を貸したって事なんだけど。

「…俺、しつこく通って…強引に許可して貰ったようなものでしたから…」
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