恋の人、愛の人。
【明日は土曜です。構わなければ会って話をしたいのですがどうでしょうか】
あ、…落ち着いた文章だ。勿論、メールだから気持ちは解らないけど。
【うちに来て貰ってもいいですか。何時に来て貰ってもいいので。
黒埼君、私は大丈夫だからね】
これでちょっとでも楽になれたかな。楽という言い方もどうかと思うけど。
【解りました。明日伺います】
…はぁ、明日来るのね。
ピンポン。
…誰だろう。
部長だ。…。
カチャ。
「部長」
「夜分すまない。仕事の帰りに寄ってみた。
…迷惑だったかな」
…とても恐縮しているように見えた。
「いいえ、…あ、あの」
まだ心配なのだろうか。上がってもらうよう言った方がいいだろうか。
「あー、気にしないでくれ。顔を見に来ただけだ。それから、貰ったメール。気にしていたようだが、何も気にする事はない。
それより、私の方が話し方がいつも偉そうで申し訳ない。普通の会話もまるで上から言っているようになってしまって申し訳ない。まだ、その、慣れてないんだ」
「いいえ、そんな事はありません。部長は部長という立場もありますから」
「いや、それが駄目なところなんだ。そういう風に思われてしまうから。思わせている」
「あ、そうではなくて…まだ、というか、そういうのは、仕方ない部分だと思います。部長は部長です、まだ慣れてないからだと思います」
「…こんばんは」
頭を軽く下げて部長の後ろを人が通り過ぎた。
「あ、こんばんは。
…あの、構わなければ、中に入りませんか?少し、聞いて欲しい事があって…」
隣の人が帰って来て、声を掛けられた。
「私は構わないが…」
「では、お願いします」
「ん。では、お邪魔するよ」
「はい、どうぞ」
結果として、招き入れてしまった。