恋の人、愛の人。


昼間と同じように部長の上着を受け取りハンガーに掛けた。
ソファーでは横並びになってしまうのでダイニングの方に座って貰った。


珈琲を出して、私も向かいに座った。

「あ、お食事は済まされてますか?」

「ん、まあ」

「まだなんですか?」

「まあ、…うん」

「あ、では珈琲より何か…」

「いや、いいよ。話を聞こう」

「ちょっとだけ待ってください。そんなに時間は取りませんから。…あ、…また、…何だかいつも簡単に作れる物しか、お出しできませんね」

「いや、構わないでくれ」

「有り合わせですから。だから10分くらい待ってください」

改めて作るのはお味噌汁くらいのもの。あとは常備菜だ。

冷蔵庫から小分けして入れてあるタッパーを取り出しプレートに盛っていく。
昼間、あれから暇に任せて色々と料理をした。何だか今となっては作っておいて良かったと思う。
蓮根と人参のきんぴら、煮物、白身魚の南蛮漬け、あとは白菜の漬け物。


「お待たせしました」

ご飯とお味噌汁を装って運んだ。プレートを置いた。

「好き嫌いはありませんでしたよね?こんな物ですが、どうぞ」

…。

「あ、手を洗いますよね。どうぞ」

「…うん」

キッチンで洗って終わるとタオルを渡した。掛けてあるタオルはかなりの頻度、料理をしながら手を拭いていたから。


「では、…頂かせて貰う」

…ゔ、またちょっとドキッとなった。

「は、はい、どうぞ」

変な緊張が走った…。

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