恋の人、愛の人。


タオルは…もしかして無い?

…。

聞かなかった…どこかにあるのかも知れない。

携帯を取って電話してみた。
陽佑さん…。

「はい、どうした!何かあったのか!」

どうやら慌てさせてしまったようだ。

「あ、すみません、何かというか、聞き忘れていて。バスタオルとか、タオル、あるかなと思って…」

「あ、はぁ…。何だ、タオルね。ごめんごめん、うっかりしてたな。あるぞ。シャワー室の横に…高い位置に、扉のある棚があるだろ?」

「…えっと…、はい、はいあります」

「その中にあるから」

…良かった。

「解りました、すみません、有り難うございました。じゃあ」

「あ、大丈夫か?変わったことはないか?」

「はい、特には。大丈夫です」

「鍵、ちゃんとしたか?」

「はい」

「外も、部屋もだぞ?」

「はい。してます。…あの」

「ん?」

「もういいですか?私、濡れたままなので…」

「ん?」

「先に、確かめないでシャワーしちゃって、慌てて電話したんです。だから濡れたままなんですよね」

…。

「…陽佑さん?」

「…んあ、あぁ。そそっかしいな。言ってなかった俺も悪いけど」

「ですよね。無かったら…最悪、シーツにそのまま包まるつもりでした。寒くない時期だから良かったと思って、それで何とかしてました」

寒くなくてもシャワーの後の濡れた身体が寒くなって来た。ぐっと背伸びして、棚から取り出し、バスタオルを片手で身体に巻き付けた。
ごそごそしているのが解ってしまったかも知れない。

「シーツは…濡らしてしまう事に…なってたと思うけど……よし」

巻き付ける事に気を取られ、声も途切れ途切れになった。

「あ?ああ…、そうか。一応、シーツは換えてから使ってない。だから、綺麗なままだ。枕も、安心しろ」

「あ、ハハ、はい。大丈夫ですよ。…そんな。では、ごめんなさい、驚かすような電話をして。有り難うございました」

「いや、じゃあな」

「はい」

「…あ。何かあったら遠慮するな、電話しろよ?」

「あ、はい。フフフ。何かあったら一所懸命連絡します」

そうだった、また気休めみたいな事を、俺は…、しかし。
…はぁ…参ったな。
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