恋の人、愛の人。

「じゃあ…俺は帰るから」

片付けの終わった陽佑さんは、帰る身支度を整え裏口に向かった。

「出たら鍵かけて。部屋の鍵も忘れずする事、いいね。必ずだ。…じゃあ、おやすみ」

「はい、有り難うございます、おやすみなさい」

少しその場に居た。
陽佑さんは何度か振り向きながら帰って行った。
はぁ、…まさか、今夜も黒埼君が居るとは思わなかった。…本当に…どういうつもりなんだろう。
鍵をかけて事務所に戻った。


部屋を眺めて見た。変に匂いが篭っているとか、…湿気が多いとか、全くそんな事はなく、普通に居られそうだ。

ベッドに腰掛けていた。当たり前だけど、いきなり知らない部屋に一人だ…。
特に見たい訳でもないけどテレビをつけた。
一人だから、いつもと変わらない紛らわしだ。
…はぁ、朝は早く帰ろう…。

部屋の鍵をかけた。
この部屋…。淡々と貸してくれた。
危なくないと言っても一人で店の部屋…多少の不安はどうしても感じてしまう。
シャワー、借りようかな…。入っている間がちょっと怖い気もする。
そのままでも構わないくらいだけど…。やっぱり借りよう。

ベッドに脱いだ服を置き、全裸でシャワー室に入った。
お湯は勢いは弱かったがちゃんと使えた。
…普通、先にお湯がちゃんと出るか確かめてからだよね…フフ。…はぁ。

流す程度で直ぐに出て、…あ、と思った。
…タオル。…タオルは？あるの？