秘め恋

「アオイって意外と甘えん坊なんだね。バイト中はこういう人とは思ってなかった」

「ふふっ。使い分けてるからね」

「家でもこうなの? 旦那に対して」

「さあ、どうでしょう?」

 アオイの声がわずかに歪んだような気がした。マサはあえて何も突っ込まなかった。あまり夫婦の関係に口を出しすぎるのも変に思われる。あくまで自分は友達なのだ。わきまえなければ。

 それからしばらくの静寂が流れた。正確には室内に小さく有線放送が流れていたがあまり気にならない。アオイはこんなことを訊いてきた。

「ソフレって知ってる?」

「新しい柔軟剤か何かの名前?」

「添い寝フレンドの略なんだって」

「キスフレにソフレに、世の中色んなフレンドがあるね」

「それで言えば、私達って今はなでフレだね」

「頭撫でてるの俺だけだけどね」

「マサも撫でてほしい?」

「遠慮しとく」

 恥ずかしさからそっけなく答えるマサを見て、アオイが小さく笑う。なぜ彼女が添い寝フレンドの話をしてきたのかマサには分からなかった。
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