秘め恋
「それだけで満たされるから、皆ソフレを作るのかな?」
「どうだろ。まあそういうのもあるかもね。世の中色んな人がいるし」
「そうだね」
一拍置いて、アオイはつぶやく。
「そういうのって友達止まりの関係でしょ? だから、抱きしめ合ったところで満たされるのかどうか疑問だったけど、今はそういうのにちょっと憧れるんだ」
「憧れてるなら旦那にしてもらえば? いくらでも聞いてくれるでしょ、アオイの頼みなら」
嫉妬心がにじんでしまわないよう、世間話の口調でマサは言った。アオイと仲良くやっていくためには、今後いつだって旦那関連の話題にさらりと対応しなければならない。彼女の重荷になるようなことはあってはいけない。そんな覚悟のようなものを抱き始めた矢先、それを砕くような言葉がアオイの口から放たれた。
「聞いてもらえなかったらどうすればいい?」
「え?」
「だからってわけじゃないけど、今だけ私達、ソフレにならない?」
言い終わらないうちに、アオイはマサの胸元にそっと身を寄せた。そこまでしてもやはり既婚者なりの遠慮があるのか、彼女はマサの背中に手を回すことはなかった。ただ子猫のように身を縮こまらせてマサに寄り添うだけ。
抱きしめてほしい。アオイからそんなメッセージを感じた。言葉にできない、だけど確かな言葉。