あの日みた月を君も
校長やらPTA会長やらのくだらない長い話を聞かされて、ようやく入学式が終わった。

担任の先生に引率されて、教室にぞろぞろと向かった。

こんなにもウキウキしない学校生活は初めてだ。

これから先が思いやられる。


「ねー、どこの中学から来たの?」

私の後ろを歩いていた、前髪がやけに短いその人が話しかけてきた。

「あ、私?S中。」

「えー、S中?」

明らかに、あんな山の上の田舎から出て来たの?みたいな顔をしていた。

あなたは?

なんて聞くのもうざったくて、そのまま前を向いて歩いた。

「私は、近藤カスミ。T中出身なの。よろしくね。」

私の後頭部にカスミは続けた。

T中ね。

それほど都会の中学でもないじゃん。

背を向けたまま、少し笑った。

そうこうしているうちに教室にたどり着く。

机の上にはこれまた出席順に名前が貼られていた。

自分の席に座ると、カスミも当然のことながら私の後ろに座った。

「あなたの名前は佐久間リョウっていうのね?男っぽい名前だね。」

カスミは私の机の上に書いてある名前を見て言った。

男っぽい名前ね、なんて初対面に言うようなことじゃないわよね。

失礼な子。

あまりかかわらないでおこう。

私は少しだけカスミに微笑むと、すぐに前を向いた。
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