あの日みた月を君も
「そういうマサキは最近どうなんだ?結婚はしないのか?」

自分の話をこれ以上続けていたら、自分を見失いそうでマサキに振った。

「結婚ねぇ。俺はまだいいかな。結婚考える時間的余裕が全くないや。」

「でも、マサキの両親もそろそろなんて思ってんじゃないの?」

「まぁな。家に帰るとその話ばっかだから、最近帰ってないし。」

「マサキは毎日忙しいだな。正直羨ましいよ。」

「そうか?いくらでも代わってやるよ。俺も何日か羽伸ばしたいわ。」

僕は笑いながら、お猪口を口元に持っていく。

余計な事を考えられないくらいに忙しくしたいと思っていた。

自分の本当にやりたい研究に日々明け暮れる毎日を大学を卒業する前まで夢見ていたのに。


アユミは、どうしているんだろう。

結婚して幸せに暮らしているんだろうか。

お父さんの会社が大変だったとしても、相手と幸せな家庭を築いているならそれで構わない。

頬を赤く染めて、えくぼを作って笑うアユミの顔が思い出される。

会ってみたい。

今のアユミと。

「あ、そうそう。」

マサキはわざとらしく思い出した様子で僕を見た。

「アユミちゃん、卒業してすぐ結婚したんだけど、子供がなかなか出来なくて向こうの親と折り合い悪くなって離婚したらしいよ。」



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