あの日みた月を君も
episode-5
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アユミが離婚していたなんて。

全く知らなかった。マサキに聞くまでは。

マサキは記者という特権を使ってなのか、どうして知ったのかはわからないけれど、アユミの連絡先をメモに書いてくれた。

アユミは、今看護婦の免許を取って、Ｓ市立病院に勤務しているという。

薬の開発という夢はたたれていたけれど、看護婦という仕事は彼女らしい選択だと思った。

今１人で戦っているであろうアユミの事を思うと、胸が苦しくなった。

今すぐにでもアユミのそばにかけつけて、その小さな体を抱きしめてやりたい。

そんな中、マサキの予告通り、アユミの父親の経営する銀行の不正がトップ記事で新聞に載った。

社長が新聞のその記事を眺めながら、深いため息をついた。

「大変だねぇ。地方銀行も、ここまで叩かれちゃ再建は難しいだろう。」

僕はデスクに向かいながら、

「ええ。」

とだけ相づちを打った。

「あ、そうだ。多治見くん。例の娘との話なんだが。」

社長はわざわざ僕のデスクのそばまでやってきて、小声で言った。

「今週の日曜あたりはどうだろうか？」

先日のアユミの一件と、日々の業務に追われてすっかり忘れていた。

「あ、ああ。大丈夫です。」

元々週末は１人で過ごすと決めている僕には日曜に予定が入ることはほとんどない。




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