あの日みた月を君も
7.部活
7.部活



撮影が始まった。

立ち稽古とは違って、実際フィルムが回ると緊張が増した。

フィルムが回ったら、最高の演技と表情でこなさなくちゃならないっていう。

皆も同じだったのか、NG連発。

誰かがNGを出す度に、この緊張は自分だけじゃないってホッとしていた。

「緊張するわぁ。」

私の横でカスミが私の腕を掴んできた。

なんとなく、こないだショウコに言われたことがひっかかってる。

緊張するカスミには何も答えず前を向いた。

そんな中、私なんかよりもセリフが多く出番も多いヒロは意外と冷静に見えた。

時々私と目が合う。

目が合ったからといって、どうこうするわけじゃないけど、なんていうか嫌な気はしなかった。

どうして見てくるのかはわからないけど、きっと私がちゃんと役を真っ当するのか気になってるのかもしれない。

横でカスミが私にささやく。

「また見てた。大山くん、さっきからリョウの方ばっか見てる気がする。」

「そんなことないよ。カスミのこと見てんじゃない?」

少しつっけんどんに答えた。

「そうかな。」

カスミはほんのり頬を染めた。

やっぱ好きなんだ。大山ヒロのこと。

だからといって、あの例の3人組みと結託してるなんてショウコも考えすぎだよね。

「この映画撮影終わったら、モーションかけてみたら?」

あまり感情を入れずに言った。

「私、リョウみたいにヒロと面識ないし、今度3人でしゃべる機会作ってくれない?」

カスミって、時々ものすごく強烈な意志を表明してくる。

控えめな人間に見えて、そうでもない。



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