あの日みた月を君も
「オッケー。撮影が終わったらきっかけ探ってみるわ。」

「やった。お願いね、リョウ。」

カスミは嬉しそうに私の腕を一層強い力で掴んだ。

痛い、んだけど。

我ながらお人好しだなって思う。

そんなに心を開いていないカスミの恋の手助けするなんて。

ヒロは着々と撮影を進めていた。

いつものように平然と。

こいつは、何だろ?とても不思議な香りがする。

昨日の夜みたいに、無邪気に話しかける時もあれば、至って冷静クールな表情で近寄りがたい雰囲気を出してる時もある。

どっちが本当のヒロの姿かって思うけど、やっぱちどっちもヒロなわけで。

でも、その立ち姿や横顔は、まぁモテてもしょうがないかとも思ったり。

ヒロみたいな男子が恋する女子ってどんな人なんだろ。

こんなにつかみ所のない、月好き男子が。

また目が合った。

ドキンとしないといえば嘘になる。

今日はやけに目が合う。

後で、例のカスミとのことついでに「どうしてそんなに見てくるの?」って聞いてみようか。

チャイムが鳴った。

皆ぞろぞろと席にもどっていく。

席につくやいなや、ヒロが私に声をかけてきた。

「あのさ。」

ヒロの方に顔を向ける。

「放課後、ちょっと時間あいてる?」

後ろにいるかもしれないカスミの方にちらっと視線を向けると、トイレに立ったのかまだ席には戻っていなかった。

「うん。ちょっとだけならね。」

だって、あの3人組に見られたらやっかいだし。

「じゃ、駅前のロータリーカフェに来て。」

私は何も言わず軽く頷いて前を向いた。


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