あの日みた月を君も
正直悪くはない話だなと思った。

天文台って興味はあるけど、ヒロの言うように誰かを誘うのもなんだか、だし、1人で行くとなると億劫だったから。

それに月一の活動でいいっていうのも魅力的だった。

あとは、部員がヒロと2人ってことも。

別にヒロのこと気に入ってるとかそんなんじゃなくて、なじめない高校の生徒がわんさか入ってる部には入りたくなかったってことだけ。

「じゃ、入ろうかな。」

小さな声で言った。

「オッケー!じゃ決まりだね。早速明日担任に報告しておくよ。他に天文に興味のある人がいたら聞いておいて。」

なぁんだ。

他にも誘うんだ。

って、そりゃそうだよね。2人部員なんてちょっと寂しいもの。

「とりあえず、名前だけでも最低10名はいるんだって。名前貸してくれる友達いたらお願いしてみてくれる?」

名前くらいなら貸してくれる人はいるかもしれないわね。

あ、カスミ。

カスミには言わなくちゃいけないかもしれない。

だってカスミ好きなの知ってて、2人部員になるわけにはいかないもん。

小さくため息をついた。

「じゃあさ、私といつも一緒にいるカスミにも天文観測部のこと教えてあげてもいい?」

「え?」

カフェオレを飲んでいるヒロの眉間に一瞬皺が寄った。

「君の後ろの席の子?」

「うん、そう。なんなら今度機会設けるから、直接教えてあげてよ。」

ああ、我ながらいい運びになったと思う。

ヒロはしばらく考えていたけど、

「いいよ。いつでも。」

と答えた。

いいよって言われたら、また、「なぁんだ」なんて思ってしまう。

「じゃ、明日にでも聞いてみるね。」

「うん。」

急にに真顔になったヒロが気になったけど、特に気にしないでおいた。
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