あの日みた月を君も
「撮影始まったけど、例の3人組みは君に嫌がらせしてない?」

「今のところはね。」

そういえば、私が今の役から降りるってことで話がついていたっけ。

その約束はしっかり破っちゃってるわけで。

逆に何もないことが気味が悪くもあった。

「結局役もそのままだし、また何か言われてもおかしくはないけど。言われたら適当に流しておくわ。」

「佐久間さんって強いんだね。」

「そう?だって、私はちっとも悪くないだもん。」

「そりゃそうだけどさ。自分の意思をしっかり貫ける強さっていうか、僕も見習いたいよ。」

「なに、それ。じゃ大山くんは結構優柔不断だったりするの?」

「そうかもしれないね。これでも結構昔から自分の意思を前に出すのは苦手なんだ。」

「そうかな。今日だって部活勧誘してるじゃない。」

ヒロは一瞬言葉に詰まった。

そして、

「本当だね。」

と言って笑った。

「変な奴。」

私もそんなヒロを見て笑った。

こうして、映画撮影真っ只中の夕方、天文観測部が我が校始まって以来発足することが決まった。

担任が顧問っていうのが、若干嫌なんだけどね。
< 89 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop