さくら 咲け



「こ、こっち!」



突然すぎて何も考えられない。ひとまず、人がいないところ。



...昨日の、踊り場を目指す。





「あのね、圭介くん。」



着いたところで、ずっと私の後ろで着いてきていた圭介くんに振り返る。



圭介くんは、変なところで止まったうえ、妙に深刻そうな顔をしている私に動揺してるんだろう。頭の上にはてなマークが浮かんでる。



「まず、ごめんなさい。本当は、用事なんてないの。」



「え??」



嘘をついたままも嫌だから、先に言っちゃった。



「圭介くんを、ここに連れてきたのは、私の個人的なお願いの為で...」



「う、うん。どうしたの?」



私の次の言葉を待つ圭介くん。仕事中に抜け出した私に、怒ってなんかいないんだろうな。




「あのね、


──圭介くんが、好きです」



言った。言ってしまった。



目を見て、言えた。



「え、と...」



突然言われた圭介くんは、さっきよりも動揺してるみたい。



「返事、もらえる?」



急かしてごめんね。私は、早く決着つけないとダメなの。前に進めないの。



沙奈に、顔向けできないの。



< 95 / 160 >

この作品をシェア

pagetop