愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「お世辞ばっかり。そんなに私を持ち上げなくても、逃げだしたりはしないのに。せっかく今、理想の婚約者を演じても、ギャラリーはいないわよ」

瑠衣は俺から目を逸らした。

「俺は思ったことしか言わないよ」

彼女が言うように、すべてが演技で嘘ならば、心に吹き荒れるこの愛しさをどう説明したらよいのか。

手を引いて瑠衣の身体をそっと起こし、彼女を座らせる。
目の前で彼女をじっと見つめた。彼女もまっすぐに俺を見つめ返す。
潤んだ瞳に艶やかな唇。そのすべてに触れたくなる。

「奏多さんは、私が珍しいだけよ。花嫁候補の人たちは、皆綺麗だったわ。美人を見飽きてるんじゃないの」

そう言って、再び目を逸らそうとする彼女の顎を掴む。

「綺麗なだけの女なんて、確かに見飽きたよ。俺の心にはなにも響かない」

それだけ言うと、そのまま唇を重ねた。

ダメだと思えば思うほどに、彼女に触れたくなる。
手放すことを条件に入れた途端に、そうすることが惜しくなる。

「かな……んんっ……」

瑠衣の吐息を掬うように、舌を絡めていく。

説明のつかないもどかしさが、心を占めていくのが息苦しく感じる。



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