愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
瑠衣を偽装結婚の相手に選んだことを、激しく後悔する。
君の純真な心が、俺を捕らえないはずなどなかったのだと。
いっそ瑠衣に抱くこの気持ちを愛情だと認めてしまえば、俺は変わるのだろうか。

そっと唇を離して彼女を見ると、驚いたような顔で俺を見ていた。

「どうして?私は逃げだしたりはしないと言ったのに。終われなくなってしまうじゃない」

今にも泣きだしそうな彼女から目を逸らし、俺は立ち上がった。

「そうだね。君は逃げだしたりはしない。それは、君自身のためになるからだ。これから出会う愛する人と、未来を歩けるからだよ」

認めるわけにはいかない。
彼女は、俺と同じ気持ちではいないからだ。

臆病だと自分でも思う。
だが愛することも失うことも、これまでになかった俺は、どうすることが正解なのかわからない。

「この先そんな人が現れるのか、私には自信がないわ。未来をともに歩く愛する人というのは、奏多さんなのかもしれないと思ってしまいそうになるの。奏多さんはそう考えたことはない?」

『それは君次第だ』と言おうとしたが、あまりにも都合がいい気がしてやめた。


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