愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「俺たちの始まりはあまりにも打算的で、恋愛ではない。目的を果たすための同士だ。その関係は、きっと最後まで変わらないんじゃないかな」

彼女を振り返り見下ろす。

「俺は疑似恋愛によって君に、男と接する方法を教えてあげるつもりでいた。それが恩返しだと思ってね。それくらいしか、君になにもしてはあげられないから。本気だと思われてしまうと困る」

もっともらしい言い訳は、自分を守るための嘘だと、俺はすでに気がついていた。

『始まりはどうであれ、今は君が好きになったのかもしれない』だなんて勝手なことを、今さら言えるはずなどない。

「そっか。そうよね、奏多さんが私と本気で結婚したいはずないものね。なんの取り柄もない田舎娘じゃ、あなたほどの人が心を動かすはずはないし」

俺は余裕のあるフリをして笑う。

「ははっ。田舎娘か。確かに君は、素朴で純情だから、悪い男に騙されたりはしないかと心配だ。だから男に慣れてもらおうと思ったのかもな。俺がそばから離れてしまえば、もう君を守れなくなるから」

話しながら、自分の拳が震えてくるのをこらえる。
いつか自分が彼女のそばにいられなくなることを、認めたくはない。

「私はそんなにバカじゃないわ。大勢の人の前で、あなたの婚約者だと嘘をつくこともできたのよ」

口を尖らせて言う彼女を見つめる。
君は平気ではなかったからこそ意識を失ったのだと、強く言おうと思ったがやめた。


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