愛され婚～契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます～
「彼を選んだのか。だったら……確かに俺も、誰かと結婚することを決めるべきだな。どうせならば、君が言うように、会社のためになるような人とね。やっぱり俺には、政略結婚しか道はなさそうだ」

「奏多さん」

瑠衣は悲しげな顔をする。

「君は身を引いて正解だ。長澤くんならば、君を不幸にはしない。ご両親もさぞかし喜ばれるだろう。誰にも反対されずに済む」

驚くほどにペラペラと嫌味を言える。
俺の中で、なにかが吹っ切れたようだった。

「君といると、自分が違う人にでもなったように、思いきり笑えたんだ。そんな自分がいることを、知れただけでよかった。本当は、聞きたいことがあったからここに来たんだ」

「え……なに」

瑠衣が俺を見上げた。

「君は俺と本物になることを、少しでも考えたりはしないのかと。俺からも聞いてみたかった」

彼女の肩に置いていた手を引く。
彼女からの答えはないのだと悟る。
瑠衣の目が涙で滲んでいくのを見ながら、俺は彼女に微笑んだ。

「もういいよ。最後まで困らせて悪かった。婚約解消……ということでいいか？実はすでに、違う縁談がまとまりつつある。会社にとっては、ありがたい相手とのね。君も会っただろ？聖羅のことを考えるよ」

俺の言葉に、彼女は驚いた顔をした。
「奏多さん……そんな」

「どれだけ逃げても、逃げきれない。割り切って、身を固めるしか道はなさそうだ。君が言うように、俺には立場があるから」

彼女に背を向け、長澤に笑いかける。

「俺の負けだ。君に瑠衣を任せるよ。ただし、守るべきルールがある。……彼女を、思いきり幸せにすること。ゲームは続いてるんだ」

「ゲーム？」

彼は不思議そうに首をかしげる。




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