愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
彼の肩を軽く叩くと、俺は歩きだした。

「奏多さん!」

瑠衣が呼ぶ声に振り返らない。

「あ、そうだ。指輪は餞別。売ってくれていいよ」

これで終わった。もう、誰にも嘘はついていない。
瑠衣の心の負担もなくなるだろう。

いつまでかかるかわからないが、俺は今日から君を忘れる。
君の笑顔を頭から消していく。

そのやわらかな肌も、ふわりと揺れる髪も、楽しかった時間もすべて。

いつかもう一度君に会えたら、幸せで暮らしていると言えるように。
聖羅を愛する努力をしなければならない。そうしないと、君を諦めた意味がないから。

そう心に誓いながら、ギュッと切なく痛む胸を押さえた。

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