愛され婚~契約妻ですが、御曹司に甘やかされてます~
「この船はハネムーンに旅立つカップルが、結婚式を終えてから飛行機に乗るまでに利用することが多いんだ。いつか瑠衣も、本当の結婚をしたときに来たらいい。そのときは招待するよ」

光が溢れる船内へと向かいながら、奏多さんは言った。

「素敵ね。ぜひお願いします」

彼の話の中の、私の本当の結婚相手は、奏多さんではない。
いつか奏多さん以外の人と、ここを訪れることなどできるのか。
海斗との縁談を断ち切り、奏多さんと別れたあとの私には、どんな未来が待っているのだろうか。

「瑠衣」

「え?」

彼が足を止める。

「ありがとう。君には感謝してもしきれない」

一言だけそう言うと、彼は優しい眼差しで私を見つめた。
彼の視線から感じる信頼。
この人が私を選んだ理由。
それを裏切ることはできない。

その瞬間に私は心に決めた。
彼を困らせるようなことを、決してしないと。

好きだなんて言わない。
ずっとこのまま、あなたの手を離したくはないと思っていることを、決してあなたには悟らせない。

きっと一年後に別れるときには、私は胸を引き裂かれるような悲しみを味わうだろう。
そのあと誰かを愛したりはできないはずだ。


< 63 / 184 >

この作品をシェア

pagetop