きらい、大きらい
「青木先輩……そんなにぎゅーってしたら痛いです」
「……本気でびびったんだよ。心臓止まるかと思った」
芽衣の声に続いて聞こえる青木先輩の声。
それは、つい先ほどまでのものとは違う、泣き出しそうな、弱々しい声。
芽衣の小さな肩を抱きしめる腕からも、彼がどれほど心配をしていたのかが感じ取れる。
「……心配させるなよ、バカ芽衣」
安堵しきった、柔らかな笑顔。
私の前では隠していた、彼女にしか、見せない姿。
その光景に、私はドアからそっと手を離して、音を立てないように一歩下がる。
そして、入り口に芽衣の鞄を置くとその場を離れた。
保健室から少し離れた先、校舎の端の階段の踊り場まで来たところで、力が抜けたようにその場にうずくまる。
青木先輩は、芽衣のことが本当に好きなんだ。
とても大切で、心配で、愛しくて
芽衣を想って彼は
強い不安に襲われる。
幸せな笑顔をこぼす。
思えば思うほど、息がつまって胸が苦しい。