福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜

開かれた扉の向こう側。ドアが開かれた音が聞こえたのか、左手にある扉の向こう側からバタバタと足音が聞こえてくる。

だんだんと大きくなる足音を聞いていると、間も無く左手の扉が開かれた。すると、開いた扉からはゆるく巻かれた栗色の髪が可愛らしい女性が出てきた。


「あら!幸くん、おかえりなさい!」

待ってたわ、と言って笑ったその女性は、西宮さんから私に視線を移すと、くるりと目を見開いた。

「あなたが麻美ちゃんね? やだあ、可愛らしい女の子で私びっくりしちゃったわ!」

上がってちょうだい、と言ってにこにこと笑う女性に会釈をした私は、西宮さんに続いて家に上がった。

しかし、あの女性は一体誰なのだろう。お姉さんなのだろうか。それとも……と疑問に思っていたその時、私の疑問を読み取ったのか、西宮さんが「母親」と言って苦笑いを浮かべた。

「ええっ⁉︎ わ、若い……」

綺麗に整えられた身だしなみや肌の艶。私よりも高いであろう声のトーンからも、30代の息子がいる母親とはまるで思えない。


「あらやだ!私なんか、もう50代のオバさんよ? あ、リビングにみんな揃ってるから早く入ってお茶にしましょう」

くっと綺麗に上げられた口角も、やっぱりどことなく若い。

無邪気な子供のようにワクワクとした様子のお母さんが、ついさっき出てきた扉を再び開けた。


お母さんの言った〝みんな揃ってるから〟という言葉を思い出してごくり、と唾を飲む。

さっきまでとは比べ物にならないほどに速く脈を打つ心臓。

西宮さんの背中に隠れて小さく深呼吸をした私は、目の前にいる彼に続いてリビングへ足を踏み込んだ。


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