福があるにも程がある! 〜残りものは、噂のイケメン御曹司でした〜
「す、すみません……!」
咄嗟に離れたけれど、既に注目の的になってしまっている私は、恥ずかしさから顔をうつむけた。
そんな私の頭上からは「俺はそのままでも良かったけどね」なんて西宮さんの呑気な声が聞こえてきたけれど、私はそんな冗談に言葉も返せないくらい顔が熱くて仕方がない。
「ちょっと、麻美!麻美!」
私を呼ぶ優佳の声がだんだん近くなり、ゆっくり顔を上げる。すると、私の目の前までやって来ていた優佳が目を丸くして口を開いた。
「驚かせるために後で言おうと思ってたんだけど、今、麻美を抱きとめてくれたこの方が副社長なの!」
〝副社長に抱きとめてもらえて良かったじゃない〟と言わんばかりのキラキラした目で私を見る優佳。
彼女は私から西宮さんに視線を移すと「すみません、この子意外と抜けてるとこありまして」なんて笑いながら頭を下げた。
「西宮副社長、麻美とは初対面ですよね? この子、私と同じ企画販売部なんですけど、仕事熱心で良い子なので。よろしくお願いします」
「ちょっと、優佳」
ああ、婚活パーティーで西宮さんと知り合ったことを伝えてなかったし、どうしよう。
そんなことを考えながら、西宮さんの出方を伺っていると。
「あー、高橋さん。実はさ、最近縁があって柏原さんと仲良くさせてもらってるんだよね。近々、二人から良い知らせも出来ると思うから、柏原さんのことは任せてよ」
爽やかな営業スマイルのような表情を作り上げると、私の髪を一度撫でた西宮さん。
そんな彼の言葉には、優佳のみならず私も目を丸くして驚いた。
「はあっ⁉︎」
「何⁉︎ 麻美、どういうこと⁉︎」
「いや、これは違っ……」
「優佳さーん!そして、ブーケを見事に受け取られた優佳さんの友人さん、記念撮影をさせて頂いても良いですか?」
「あ、はーい!」
必死でこの訳の分からない状態を説明しようと試みたけれど、マイクを使った司会者の声がその私の声をかき消した。
優佳は笑顔で司会者に返事をすると「二次会で詳しく聞こうじゃないの」と私に残し歩き出した。