人間複製機
☆☆☆

あたしは弘樹にキスをされても、胸に触れられても嫌な顔1つしなかった。


だって今あたしは弘樹の彼女なんだから。


2人で寄り添い、弘樹の部屋で愛を語らう。


そんな、死んでもしたくないような事をしていた。


時計の針がゆっくりゆっくり刻まれて行く。


早く24時になれと願うのに、地獄のような時間はなかなか過ぎ去って行ってくれない。


「マキ。愛してるよ」


反吐が出るような囁きに、あたしは笑顔で「あたしも」と返事をする。


あたしの仮面をかぶった別の人間が表情を動かしているような感覚がした。


とにかく弘樹の機嫌を損ねてはいけない。


ここまで来て怒らせてしまったらすべてが台無しになってしまう。


それだけの思いで演技を続けた。


服を脱がされた時はさすがに鳥肌が立った。


気持悪くて、目をキツク閉じて弘樹の顔を見ないようにした。


代わりに陸人の顔を思い出した。

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