人間複製機
あたしの相手は弘樹じゃなくて陸人だ。


そう思う事で少しだけ楽になれた。


心の痛みも体の痛みも、すべて複製を手に入れるためだと思って乗り越えた。


「マキ」


弘樹に呼ばれるたびに吐き気が込み上げて来る。


けれど、弘樹は優しかった。


決して乱暴な事はせず、時折泣きそうな顔でこちらを見て来た。


本当にあたしの事が好きなんだろう。


こんな事をしなければ手に入らないことを、悲しんでいるのかもしれない。


「マキ、俺の事好き?」


「もちろん好きだよ」


そう返事をすると、弘樹は本当に泣き出した。


24時が過ぎればあたしが弘樹の事を大嫌いになることを、弘樹はすでに知っていたからだと思う。
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