人間複製機
怒鳴るようにそう言うと、電話の向こうの弘樹がため息をはきだしたのがわかった。


『生き物は複製してから2時間で自然と溶けはじめるんだ』


「なにそれ! 聞いてないんだけど!」


『最後まで話しを聞かずに飛び出していったのはマキだろ』


そう言われてグッと言葉に詰まった。


確かに、あの時弘樹の頬を叩いて何も聞かずに家を出たのはあたしだった。


「どうすればいいの?」


『本当なら溶ける前に大き目のゴミ袋に入れてゴミ収集所に出すのが一番なんだ。

それができなかったなら、完全に溶けるのを待って掃除するしかない』


弘樹の言葉にあたしは青ざめた。


部屋の中からはプシュプシュと空気が抜けて行くような音が聞こえて来ていて、異臭は廊下まで漂ってきていた。


あれを片付ける?


そう思うと背筋が寒くなって行く。
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