人間複製機
クラスメートたちが口々に言い合う中、陸人ナオが登校してくるのが見えた。


何も知らないナオは笑顔で、とても楽しそうだ。


けれど昨日駅前でナオが見知らぬおじさんと待ち合わせをしていたのを見ている陸人は、いつもと様子が違った。


ナオの言葉にもあまり反応を返していない。


2人が近づいて来たのを見計らって、あたしは出入り口に張っていた写真を剥がした。


陸人がそれに気が付いてこちらへ視線を向ける。


あたしは写真を丸めて何でもないような顔をしてみせた。


「マキ、なに持ってるんだ？」


思っていた通り、陸人が気にしてそう声をかけて来た。


あたしは慌てながら「なんでもないから」と、早口で言った。


わざと視線を空中へ泳がせて陸人と目を会わせないようにした。


「なんでもないなら見せれるだろ？」


陸人がそう言ったとき「こっちにもあるぞ！」と、教室内にいたクラスメートが声を上げた。


陸人がそちらへ視線を向ける。


あたしは教室のドアの前に立ち、陸人の行く道を阻んだ。
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