人間複製機
☆☆☆

家に戻ったあたしはさっそく複製機を取り出した。


実は今日も陸人の制服からこっそり髪の毛を戴いてきたのだ。


今日の出来事で複製される陸人にも変化があったはずだ。


あたしははやる気持ちを押さえながら長い長い1分間を待った。


複製された陸人は険しい表情をしていた。


「陸人、そんなに怖い顔をしてどうしたの?」


「信じてた人に裏切られたんだ。悲しいし、苦しいし、怒りを我慢することができない」


陸人はそう言うと大きなため息を吐き出した。


「ナオのことだね? あたしもナオのした事はビックリしたよ。あんなことするなんて思わなかった」


「そうなんだ。もうどうすればいいかわからない」


陸人はそう言って頭を抱えた。


本物の陸人も同じように苦しんでいると思うと、可愛そうになって来た。


「陸人、元気出して」


あたしはそう言って陸人の背中に両手を回した。
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