人間複製機
部屋に入る直前、一瞬だけ動きを止めた。


緩めていた警戒心が蘇って来るのを感じる。


このまま弘樹について部屋に入ってもいいかどうか、迷っている自分がいる。


「どうかした?」


ドアを開けたまま、弘樹が首をかしげてそう聞いて来た。


あたしはジッと弘樹を見た。


1学期までは大人しかった弘樹。


でも今は違う。


クラス内でも目立つグループに入っている。


そう思うと警戒心は膨らんでいった。


「複製機をここまで持って来て」


廊下に立ったままでそう言うと、弘樹は驚いたように目を見開いた。


そして「俺って信用されてない?」と、聞いてくる。


あたしはその質問には答えなかった。


肯定して怒らせてもいけない。
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