人間複製機
「いいよ」


弘樹の言葉にあたしは「え」と顔を上げた。


「これを貸してあげようか」


「貸して……くれるの?」


この際貸してもらうことでもよかった。


とにかくこの箱でお金を複製して行けば、あたしはどんなものでも手に入るのだから。


弘樹が手放したくない気持ちは痛いほどよくわかる。


こんな素晴らしい箱、誰だって手放さないだろう。


「その代わり、いくつか条件があるんだ」


「条件?」


「あぁ。複製機を使うのはこの部屋でだけだ」


「外やあたしの家じゃダメってこと?」


「もちろんだ。こんな宝物をそうそう持ち出したりはできないだろ」


あたしは弘樹の言葉に頷いた。


誰かに盗まれる危険があることは、あたしも避けたかった。
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