愛しのエマ【完】
「奈緒さん」
「ごめんなさい。ダメです」
このまま流されたい
抱かれたい
大好きな副社長
私はあなたが大好きです。
でも……ダメです。
私は副社長から離れ
助手席のドアに身体を寄せる。
「僕が嫌いですか?」
不安そうな声が心に響く。
「違うんです」
首を横に振り唇を噛む私。
「僕は奈緒さんが好きです」
「でもダメなんです」
「どうして?他に好きな人がいるんですか?」
「それは副社長でしょう」
「僕は……」
「エマさんがいるでしょう」
「彼女は別です。彼女も愛してるけど、僕は奈緒さんを……」
「同じじゃ嫌なんです」
「奈緒さん」
「違うんです。副社長は寂しいだけなんです。環境が変わって仕事も変わって、一生懸命頑張って、本当に偉いと思います。お仕事も順調でみなさん褒めてます。会社のトップになる副社長とただの事務員は似合いません」
「バカな」
「副社長は私じゃなくて、私の中のエマさんを見てるんです。愛するエマさんがいなくて寂しくて、離れていて不安で、だから私を求めたんです。錯覚です。副社長は一番愛するエマさんの影を私に見てるんです」
泣きながら
自分の想いを一気に伝えた。