愛しのエマ【完】
そして最後に案内してくれたマンションが、今の私のお城となった。
若者の住みたい街ランキング上位常連の地。
憧れの鉄筋5階建て
向かいには有名カフェ
グラノーラ専門店もある。
「日当たり悪いしお風呂も狭い。お部屋も狭いのに家賃は高いからやめなさい」
おじさんの言葉も聞こえないぐらい
私は白い壁と
美しいフロアライトと
ユニットバスに魅了され
給料の手取りの半分という
悪魔な金額
掟破りの家賃に印鑑を押した。
部屋は大満足だけど
お金が……足りない。
うちの両親
実家住みの姉と妹には
携帯料金、生命保険、大学の奨学金まで負担してるのに、家を離れた私には援助なし。
くやしい……けど仕方ない。
憧れの部屋と生活を手に入れた私は
向かいのグラノーラ店とカフェを横目で見ながら、スーパーの見切り品を主婦と争う日々。
都会が実家の子がうらやましい。
みんな簡単に服やコスメを買い
エステに旅行に行く。
私は私のお城を守る為
スーパーに走り
雑誌を立ち読みして
流行のブランドをチェックし
お弁当持参で頑張る日々。
姉と妹がそんな私を応援するように
両親に内緒で米と日用品を送ってくれる。
泣けるわ。
生活がいっぱいいっぱいなので
給料が入るなら
トップのゴタゴタは関係ない
って思ってたのに