アウト*サイダー

 ランドセルを背負って玄関まで行ったのに、私は黙って引き返してきて、リビングのソファーに埋もれるのだ。

 そんな時、母は学校に行くように無理強いしなかった。かわりに、三人分の朝食の片付けと店の手伝いをするように言った。

 働かざる者食うべからず、だ。

 成績でも両親は何も言わなかった。むしろ、三者面談の時には成績が落ちていると担任から言われても、娘の責任なのだから自分で何とかしますよと、担任の言葉を失わさせていた。

 今、思えば無言の圧だったのではとも言えるが。

 この意味のない抱擁にすがり付いている娘には、何と言うんだろう。帰ったら聞いてみようかな。

 お父さんには無理だな。仮にも相手は異性だから、邪推されそうだ。お母さんに、それとなく、あっけらかんと聞いてみよう。

 多分、欲しい言葉をくれやしない。

 笑われるだけかも。

 それで、良い。

 私も、今すごく笑いたい気分だから。
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