アウト*サイダー

 私がここでケイに、うんとすごいキスでもしてやれば状況が一変するかも。……と思ってみるが、そんな度胸があればこんな風にはなってないだろうし、恋の一つや二つ、とっくにしてるだろう。

 そのうちに段々と心臓も大人しくなってきて、額に触れる冷たさを心地よく思うくらいの気持ちの余裕が出てきた。

 それに、保冷剤を互いの額で挟んでいる限りキスなんか出来っこない。私はなるべく上を向かないように、おでこを突き出すような態勢をとる。

 ……んで、いつまでこうすればいいんだろ。

 もうすぐ、チャイムが鳴ってしまう。

 この時間が名残惜しくなんてないし、早く終わって欲しいとも思う。けど、終わってしまえば孤独な教室に私は迎え入れられるんだ。

 あの狭い教室が大嫌い。

 小学生の頃からずっと。

 あの時は、どうしてこんな牢屋のような所にお母さんもお父さんも私を入れられるんだ、と怒ったりもした。

 口にはしない分、当てつけのようにずる休みなんかしたりもした。
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