アウト*サイダー
彼の胸から聞こえる鼓動の速さに、泣きながら笑ってしまう。
「ドキドキしてるね、ケイ」
「うん。涙声のハスミが可愛すぎるし、ハスミから香るシャンプーの匂いで変な気分になりそう」
ちょっと格好いいこと言うなって思ってるそばからの、この安定の変態具合。そこがケイらしい。
このままケイにくっついていたい。私の髪に指をすき入れて撫でる彼の手の、優しさだけを感じていたい。
間違っていると自覚している。私が彼に、想いを伝えれば全てが上手くいくだろうということも。
「ケイ、あのね……」
彼の体に手をあて、目を合わせて話そうと顔を上げた。何を話せばいいか、まだ定まっていないが、とにかく話さなければならないという気持ちが大きかったのだ。けれど……
「何も言わないで。じゃないとキスするから」
彼の手が腰に回ってきて、もう片方の手は私の頬についた涙の跡を拭う。楽しむように歪められた口。覗き込まれた色素の薄い目が冷たく光る。
息を呑む。子犬みたいに私の後を追う彼も、こうやって私を追い込む彼も、同一人物だと信じ難い。