アウト*サイダー
まだ日の高い、放課後の校舎裏。
そこに立つ木の裏の茂みに隠れ、蝉の亡骸を誤って踏んでしまわぬように気を付けながら、いつもなら終礼の後すぐ直帰する帰宅部の私が帰らずにいるのには理由がある。
「伊織さん、ちゃんと言いなよ? せっかく、私らが告白の機会をあげるんだから」
忌々しい声で憎たらしい言葉を吐く奴の、その息の根を今すぐ止めて……じゃなくて、河西さん達の悪事を防ぐ為に。
何が気に入らないのか、私だけを標的にすればいいのに、表面的に仲の良いフリをしながらハルちゃんの自由を奪う河西さん。
断れない彼女の弱味に付け入って、強制的に行動を共にさせるのだ。
しかし、それでも放課後まで縛ることはなかったので、バレないように後をついて来たら……案の定だ。
彼女に腕を組まれているハルちゃんの表情は不安に満ちていた。
「あの、ほんとに…………私は……」
泣きそうな、弱々しい声で話すハルちゃんの言葉が、途切れ途切れにしか聞き取れない。今すぐにでもハルちゃんを助けに行きたい。
「何? 私達が離れたら伊織さん一人ぼっちになっちゃうよね。今更、田口さんに助けてもらおうなんて思ってる? さすがに虫が良すぎるんじゃない?」
取り巻きの一人が偉そうに、腕を組みながらハルちゃんを睨み付ける。
思わず舌打ちが出た。