アウト*サイダー

 危険な匂いのする薬が開発されないことを祈るよ、私は。

「ま、俺はこうしてハスミを独り占めにできるだけで満足なんだけど」

 ご機嫌なケイの声。私の頭に顎を置いて、当分私を離す気はないみたいだ。

 リョウスケが私のカレーパン(もしくはタマゴサンド)を買って教室で待ちぼうけしている姿が頭を過った。

 ケイを、どう説得して戻ろうかと考え、試しに彼を手で押し退けようとした。

 ……が、やっぱり無意味だった。それに、改めて、引き締まったその身体の感触に異性を感じた。

 興味津々に服の上から彼の腹筋をなぞる私に、ケイが「ハスミのエッチ」とからかって、やっと離れた。

 その頬が真っ赤に染まっていて、こっちが恥ずかしくなる。本当にただのセクハラになってしまっていたみたいだ。

「ご、ごめん」

 気まずくて顔を見ていられない。ただ、顔を赤くしたケイはいつもより幼い感じで可愛くて、もっと見ていたくなる。

「うん、あれ以上は、ちょっと我慢出来なくなりそうだった」

 赤くなった顔を手で覆い隠しながら、ちらと私に目を向けたケイが、不敵に目を細めた。

「え?」

「ハスミの手つきがあまりにもいやらしすぎて。こういう感じで……」

 そう言って、私に手を伸ばすケイの両手を叩き下ろす。彼は残念そう(私にはおどけているようにしか見えないが)に肩をすくめて、教室に戻る私の隣に並んだ。
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