アウト*サイダー

 前髪から覗く目が私を見つめる。

 私は彼から無意識に顔を背けてしまった。

「誰も、好きじゃない」

 またイライラしてる。

 この感情は何なんだろ。

「ハスミ?」

 ケイが私の手を掴んだ。そのあったかい手に混乱する感情。電車はもうホームに着こうとしていた。

「……行くから、手、離して」

 ブレーキがかかって傾く体。ケイの手の力が少し強まった。

「俺、嫌なこと聞いた?」

「別に、そんなんじゃない」

「……そう? 怒ってるみたいだけど」

「怒ってない。だから、ほら離して」

 ケイは腑に落ちないと言うような表情のまま、私の手を離した。

 電車が完全に止まって、扉が仰々しく開いた。外に出れば雨音が聞こえた。そしてアナウンスと後ろで閉まる扉の音。同じ制服を着た子達やスーツ姿の人達が出口にぞろぞろ向かっていく。

 電車が動き出した。

 振り返ってみる。

 窓越しに彼と目が合う。けれど、電車はスピードを上げ遠ざかっていってすぐに見えなくなった。

 立ち尽くす私は置いてきぼり。

 イライラは治まった。だけど雨雲みたいに気持ちは晴れなかった。
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