アウト*サイダー

「うわ、汚い。ほら水飲んで」

 涙目になって渡された水を飲み干す。ゼーゼーと息を切らして、トクラを睨んだ。

「あんた、まさか……」

「何?」

「は、初めて……は経験したの?」

 声を潜めて聞いた私にトクラは「男子中学生みたいな聞き方しないでよ」と呆れ顔を向けた。

「でも、言ってなかった? 私、カナトとヤったって」

 何を、とはさすがに聞かない。

「言ってない!」

 軽く放心状態になる。あんな硬派気取りなカナトも男だったなんて。でも、付き合ってたんだし……当たり前といえば、そうなのかな。

「そういえば、付き合う前だったから言ってなかったわ」

 ドヒャーン。

 何だって?

 え?

 四人で無邪気に遊んでいた陰で、二人ちちくり合ってたんか!? 

「そんな驚くこと? あんただって彼氏とヤってんでしょ」

 別世界の人間になってしまったトクラとの意志疎通を諦め、心の壁を築き始める。トクラは頭を抱えた。

「ハスミ……純情ぶるのは見苦しいわよ」

 一段と高い壁を高速で築く。あれ、どうしてこんなに涙が溢れるのだろう。まだポテトが喉に刺さってるのかな。

「分かった、ごめん。謝るから」
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