アウト*サイダー

 頭をぽんぽんされて、なんとか落ち着きを取り戻した。

 お茶をストローでちびちび飲みながら、氷をカラカラかき回す。

「彼氏と付き合って一ヶ月……は経ってるのよね?」

 こくん、と頷く。

「デートもして、キスも?」

 ちょっと照れるけど、また頷く。

「彼氏に誘われたりしないの?」

 何に?

 首を傾げる私に、トクラの幾度目かの溜め息。

「質問変えるわ。あんたは彼氏としたくないの、そういうこと」

 そういうこと……。

 一瞬、イツキの顔が浮かんで、忘れかけていた感覚に体が震える。急に黙った私を、トクラが怪訝な顔を向けた。

「大丈夫? 何かあった?」

 トクラは普段、辛辣な言葉しか吐かない。けれど、私が弱ってる時だけ、こうして気遣ってくれる。別れた下僕は所詮下僕以下の男なのだ。彼女の良さを理解出来なかったのだから。

「……しないと、いけないものなのかな」

 手を繋いだり、他愛もないことで笑い合って、ふざけながらもキスをして、お互いの温もりを感じてハグをする。

 それ以上のことは、まだしてない。

 それ以上は、怖い。

 今の関係が崩れるような気がする。私が崩してしまいそうな気がするんだ。
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