アウト*サイダー
「義務ではないよ。ただ、自然とそうなるものだと思う。そうなりたいと願うの」
トクラが私の手に触れ、目を合わせて言った。
「でも、ハスミが嫌だと思うなら、それは正直に話すべきだよ。彼氏があんたと同じように思ってるとは限らない。いざ、その時になって拒絶したら、彼氏もハスミ自身も傷付くことになるでしょ?」
確かに、その通りかもしれない。
いくらケイが好きでも、我慢しようとしても、私は彼を拒まないという自信はない。
「トクラは、カナトとそうなりたいと思ってしたの?」
そう聞いて、既視感を感じた。そういえば、中学生の時もこうやって話していたのを思い出した。
「……まぁ、ね。あいつといると、何か落ち着くし、反抗期真っ只中で家に居づらい時だったから、カナトの家に逃げることも多かった。その流れってやつ?」
カナトのことが好きだと打ち明けてくれた、あの頃。私はどんなカップルよりもお似合いの二人だと確信していた。
「カナト、変わってた?」
「ううん、何も。相変わらず硬派気取ってた」
笑った彼女がどことなく寂しげな表情に見え、私はそれが寂しかった。
戻りたい。進路のことで不安だらけだったけど楽しかった頃に……と、思う傍らで、ケイが居ない所に戻りたくないとも思った。
「トクラはカナトとイツキに会いたい?」
おふざけなしに聞いた私を、トクラは鼻で笑った。
「あの時のままの二人に会う理由なんかある?」
彼女らしい答えに私も笑っていた。